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なぜ西洋において論理が重視され、日本ではそうではないのか? 近代合理主義と仏教の違い - 文脈をつなぐ

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どうも、木村(@kimu3_slime)です。

日本では、あまり論理というものが重視されていない。大学で自然科学を学び、そのことに気づきました。

どうして近代科学は西洋で起こり、日本では起こらなかったのでしょうか?

その疑問の答えとなるような内容が、「講座東洋思想〈第8〉東洋と西洋」に書いてありました。

 

西洋近代科学の発展とアリストテレスの論理学

ヨーロッパでは、近代合理主義という思想に基づき、近代科学が発達しました。その結果、物理学や化学を利用した産業が生まれ、政治や宗教、人々のあり方に大きな影響を与えています。

では、近代合理主義はどのようにして生まれたのでしょうか。それは、アリストテレスの論理学が、ルネサンスによって取り込まれたとされています。ルネサンスは、古代ギリシャ・ローマの文化を復古しようとする中世の運動ですね。

アリストテレスは、ギリシャの哲学者で、論理学の父と呼ばれています。論理学そのものを見出した人です。フィロソフィア(哲学)というのは、知を愛するという意味ですが、彼はフィロソフィアを人間の本質と考えました。プラトンの弟子でもあり、西洋のあらゆる思想・学問に大きな影響を与えた人物です。

参考:アリストテレス – Wikipedia

「ソクラテスは人間である(小前提)」「人間は死ぬ(大前提)」から「ソクラテスは死ぬ」という事実を導く論理学の方法を三段論法と言いますが、三段論法はアリストテレスによって整理されています。

参考:論理学 – Wikipedia

論理は英語でロジック(logic)と呼ばれます。その元となったのは、古代ギリシャ語のロゴスですね。ロゴスは、ミュトス(神話)と対比され、真実として語りうるものという意味合いがあります。

参考:ロゴス – Wikipedia

 

論理学から導かれる無矛盾の原理、分別

さて、論理学を重視していると、合理的な考え方が導かれます。

論理学の重要な原理が、「二つの事実が矛盾してはならない」という原理、すなわち、無矛盾の原理です。

例えば、「ソクラテスは人間である」「ソクラテスは人間ではない」ということを同時に認めることはできません。すべての命題は、真または偽のいずれか一方であるという原理ですね。

無矛盾の原理は、イエスまたはノー、0または1、白または黒と、物事を二つに分けてはっきりとさせる原理です。つまり、事物をはっきりと分ける、分別の原理ということですね。

分別の原理とは、合理的な考え方のことです。合理的とは英語でrationalと言いますが、分けることのできるという意味ですね。ちなみに、ratioは割合・比、rational numberで分数で表せる数(有理数)を指します。

こうして、思想や学問の根本にアリストテレスの論理学を置くことで、西洋では分別のある態度、合理性が培われていきました。

 

無分別の立場を強調する仏教

では、どうして日本では分別があまり重要視されていないのでしょうか。東洋の思想の代表として、仏教の考え方を参照してみましょう。

仏教には、妄分別という言葉があり、分別が排除されています。とはいえ、分別なんて存在しないという反知性的な思想ではありません。

般若(仏教の教え)は、分別の存在をまず認め、その上でそれを否定して超越します。分別がないのではなく、分別を無にする考え方ですね。

つまり、一応仏教にも分別はあるのです。しかしながら、西洋では分別は絶対的な真理とされていますが、仏教ではあくまで相対的な真理として受け入れています。そして、仏教では分別を無にする立場が強調されます。結果として、そもそも分別は重要ではない、といった考え方は広まりがちでしょう。これが、東洋で合理的な考え方や近代科学が先に発生しなかった理由の一つです。

 

もっと論理学を重視してほしい

僕は、論理学というものが日本でもっと広まってほしいなと思います。

仏教の無分別の立場も素晴らしいと思うのですが、まずは分別の立場を知らないと話にならないと思うのです。

論理的な考え方は、物事を誰にでも伝わるように説明してくれる、コミュニケーションのテクニックです。論理学は、人を自由にする学問リベラルアーツの自由七科に入っていて、文法学・修辞学と並ぶものです。それほど重要な学問にもかかわらず、それを扱っている学校の科目は、高校の数学(集合と論理)のみです。本当は、中学の国語あたりで学びたいところです……。

参考:リベラル・アーツ – Wikipedia

論理学は、そう難しいものではありません。きっかけは日々何気なく話しているような話にも論理は潜んでいて、事実の真偽や論証の仕方に注意することで論理は身につきます。

 

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画像引用:ロンリのチカラ

NHK高校講座の「ロンリのチカラ」は、高校生の演劇部の脚本を通して論理を学べます。1回あたり5分の動画なので、サクッと学べます。基礎の基礎の部分を知るには、めちゃくちゃ良い教材だと思います。

動画を見て論理学に興味が湧いたら、論理学者・野矢茂樹さんの「入門!論理学」や「論理学」を読んでみてください。予備知識が必要ないので、入門書としてかなり読みやすいです。

 

 

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木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。


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